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教員コラム 第3回
「私の研究遍歴−ロバートソンに魅せられて−」

貨幣経済論研究 担当

経営学部 教授
安部 大佳
 私の経済学研究事始めは、大学入学後、スミスの『国富論』(竹内謙二訳、改造文庫)[1931‐33]3巻を読み始めた頃に遡る。その後、中山伊知郎博士の『スミス国富論』(岩波大思想文庫)[1935]を参考に一文をまとめた経緯がある。中山著の冒頭には「ある時代の思想は、その時代の産物であると同時にまたその時代を超えた運命を持つ」と書かれている。学部での演習論文は、マーシャルの経済学に関するものであり、修士論文は、ロバートソンの利子論に関するものであった。
 スミスは、古典学派、マーシャル、ロバートソンは、新古典学派の範疇に入る。この3人の碩学は、時代を超えた運命を持っている。スミスからマーシャルを経て、ロバートソンにその経済思想が流れ込んでいる。ケインズ革命後、ケインズは華やかな舞台に上り、ロバートソンは陰が薄くなったように見える。しかし、ロバートソンの経済学には、燻し銀のように地味であるが、高邁で、深遠で、品位あるイギリスの伝統的経済思想が理路整然と体系化されている。そこにまず、私は魅力を感じる。
 私は、貨幣経済論、景気変動論および利子論を中心に、ロバートソンの経済学体系の研究を継続しているが、それらの理論の中で文人的経済学者らしく、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、『鏡の国のアリス』から絶妙な引用で当世の経済学にたっぷりと皮肉を込めて警鐘を発している。それらはロバートソンの純粋な学問的素養、資質に基づく真摯なものであり、それも私にとって大きな魅力である。
 ロバートソンには、3部作である『貨幣』[1922]、『銀行政策と価格水準』[1926]および『経済原論講義』[1957‐59]があり、それぞれが碩学の著書らしく、含蓄があり、私にとって経済学の知と発想の源泉である。サムエルソンは「ロバートソンは、収穫を取り入れただけでなく、直接生産をも行った人である。彼はまた人の心を掴むのが、うまい書き手でもあるという稀な悪徳をも備えていた」と書いているが、この稀な悪徳にも私は少なからず魅せられ、研究を続けている。先月、キドランドとプレスコットは「実物的景気循環論」他の業績でノーベル経済学賞を受賞した。この理論の発想は既にロバートソンにあり、その時代を超えた運命にも、益々魅せられるのである。

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