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教員コラム 第4回
「会計学研究の悩み」

会計原則論研究/企業会計T・U 担当

経営学部 教授
井上 良二
 企業の国際化を巡って会計の世界にも国際化の波が押し寄せてきている。企業の変化と会計の変化、そこにはどのような関係が あるのだろうか。会計、特に財務会計といわれるものは、企業の経営活動を会計用語と会計数値(貨幣数値)によって表現する 行為である。企業が利益を獲得するために資金を調達し、資源を調達し、それらを結合して、価値創造を試み、生み出した価値を 社会に提供することを活動の内容であると考えれば、会計はその調達、生産、販売の活動を跡づけることになる。忠実な表現こそが そこでは求められる。
 では、なぜ、このような表現が必要とされ、さらに、なぜ、より忠実な表現がことさらに求められるのだろうか。企業経営者と資金を 提供する投資者(現在・将来の株主、債権者等)との間で所有している情報の量が大きく異なると経営者が自らの効用を最大化するような 行動(機会主義的行動)に走ることを許すことになりかねないからである。経済学の教えを待つことなく、完全市場における資源の有効 利用には完全情報が必須である。資本市場に参加している個体(企業)に関する情報の完全化の一翼を会計は担っているといってよい。
 企業の経営活動を会計によって表現する主体は誰か。表現される企業活動の主体も、それを表現する行動を行うものも経営者である。 そうした中で、実際に経営者はどのように表現行動を行っているのか、そしてどのようにしたならば資金提供者にとって有用な情報が 開示されうるのかを研究することが、私の年来の研究方針である。
 前者のどのような表現行動を行っているのかに関する研究は「事実解明的研究」であるといわれ、後者は「規範論的研究」であると いわれる。自然科学であれば、前者のみでよいといわれるかもしれないが、社会科学においては両者ともに必要な研究である。意思を 持つ人間の研究だからである。困難は事実解明的研究によるファインディングスを価値判断を抜きにして直ちに規範的な命題に変えて 論理学的に妥当な推論を行うことができないことから生ずる。これが私にとっての最大の悩みである。
 

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