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教員コラム 第15回
「サービスのオフショアリングを考える」

国際経営戦略論研究/世界市場と経営戦略 担当

経営学部 教授
夏目 啓二
 現在、欧米のビジネス界、金融界、労働界、政界で話題となっているオフショアリング(offshoring)について紹介しましょう。このオフショアリングは、2004年のアメリカ大統領選挙の争点にもなりました。その後、オフショアリングは、国連の貿易開発会議の2004年度の報告書でも取り上げられ、2007年の現在まで多数の専門書が取り上げ世界的な関心を呼んでいます。日本ではあまり耳にする機会がありませんが、この話題は、大変、ホットな国際問題なのです。

 では、オフショアリングとはなんでしょうか。「オフショアリングとは、一般的に、以前は国内で生産されていた商品やサービスを企業が海外から購入する(輸入する)ことである」と、定義されています。オフショアリングというのは、オフショア・アウトソーシング(offsore outsourcing)とも呼ばれます。オフショア・アウトソーシングは、多国籍企業が自社の海外子会社からだけではなく、外部の請負企業や契約企業から製品やサービスを輸入することです。

 それでは、多国籍企業は、なにをオフショアリングしているのか。オフショアリングの対象は、製造、ロジスティクスと調達、エンジニアリング、金融と会計、人的資源、解析、情報技術、顧客サポートなど、企業の全ての業務プロセスです。この企業の業務プロセスのなかで最も大きな割合を占めているのが、製造とロジスティクスと調達です。このなかには、コンピュータや電子部品のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチュアリング・サービス)やナイキのシューズ製品やアパレル製品はじめ玩具や衣料品、日用品のすべてのアウトソーシングが含まれます。製造のオフショア・アウトソーシングは、エレクトロニクスから医療機器まですべてのものの請負生産を含んでいます。製造とロジスティクスと調達のオフショア・アウトソーシングは、1980年代後半から始まっており、オフショア先は、アジアと中南米が中心でした。

 しかし、今日注目されているオフショア・アウトソーシングは、製造とロジスティクスと調達ではなく、それと比べて収入規模は小さいが、エンジニアリング、金融と会計、人的資源、解析、情報技術、顧客サポートなどの業務プロセスです。これらは、サービスのオフショアリング(service offshoring)といわれるもので、サービスのオフショア・アウトソーシングです。これらは、企業のビジネス・サービスやソフトウェア開発、顧客サポートなど企業のバック・オフィス(管理事務部門)、研究開発などホワイトカラーの事務職、技術開発職です。このサービス・オフショアリングの特徴は、研究開発や事務系の仕事であることです。ホワイトカラー職種の業務を、海外で行って逆輸入する。従来行われてきたブルーカラーの工場労働ではなくて、知識労働、事務労働で、アメリカの中間層の仕事を、海外で業務委託して逆輸入しているのです。

 この世界のオフショア・アウトソーシング業界における上位企業10社を見ると、ビジネス・サービスでは、アクセンチュアやIBMをはじめ米系多国籍企業6社、ウィプロやタタはじめインド系多国籍企業4社が占めます。ソフトウェア開発では、インド系多国籍企業5社と米系多国籍企業5社が占め、コール・センターでは、米系多国籍企業6社、インド系多国籍企業3社、フランス系多国籍企業が1社を占めています。今日の世界のオフショア・アウトソーシング業界では、米系多国籍企業とインド系多国籍企業が業界を支配していることが特徴です。とくに注目すべきは、インド系多国籍企業の位置が示すように、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)の新興のアウトソーシング企業が急速に台頭しているのです。
 

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