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教員コラム 第19回
「現代の医薬品企業」

企業論研究 担当

経営学部 教授
細川 孝
 私は、大学院の博士課程前期課程の在学中から一貫して、医薬品企業を研究対象としてきました。すでに10数年が経過したことになります。なかなか研究成果をまとめるには至っていないのですが、改めてこれまでの研究の歩みを振り返ると、研究対象の広がりと研究課題の深化を実感しています。

 修士論文で対象としたのは、アメリカのメルク社における研究開発です。メルク社における研究開発の歴史と現代的な展開について考察を深めようとしました。その後、メルク社を対象としながら、研究開発に対するこだわりを持ちつつも、経営戦略についての研究をすすめるようになりました。それは、私が研究を始めた1990年代という時期が、医薬品企業の大きな転換期にあるという思いを持つようになったからです。

 転換期の内実という点では、医薬品産業における企業集中は特筆すべき事柄です。大学に職を得た頃からは、医薬品企業のM&A(合併・買収)をテーマにするようになりました。医薬品産業におけるM&Aの動向を考察し、メルク社とグラクソ社(現在のグラクソ・スミスクライン)の比較研究にもとりくみました。

 医薬品産業におけるM&Aは1980年代末以降、今日まで活発に行われています。それは、M&Aの規模が巨大である、クロスボーダー型である、などの特徴をもっています。通信、金融などの産業とあわせ、この時期の世界的なM&Aの盛り上がりは、第5次企業集中運動と呼ばれます。この点で、医薬品産業におけるM&Aは、興味深い事例を提供してくれています。

1990年代は、グローバリゼーションとともにIT革命が進展した時期です。グローバリゼーションと情報化の進展は、医薬品企業の経営システムを大きく変革しつつあります。医薬品企業における研究開発についても同様です。科学・技術の発展との関わりでは、ヒトゲノム解読の与える影響には非常に大きなものがあります。ゲノム創薬が本格化してきつつありますが、そこでは研究開発のありようは大きく転換されます。情報化、戦略的提携、アウトソーシングなどが本格化するのです。

医薬品企業の製品は、人間の生命に直接関わるものです。この点で、企業倫理と生命倫理は医薬品企業研究にとっても重要なテーマです。また、最も医薬品を必要とする途上国の人々が医薬品を入手できないという問題を考えるとき、グローバル・ガバナンスも重要なテーマとなります。私がいま最も関心を持ち、取り組もうとしているのが、これらのテーマに他なりません。医薬品企業の研究を通じて、人権と民主主義の視点から現代経営学を構想することが出来ないかという思いを持っているのです。

 

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