Q5:国際流通論の答え
答えは、吉野家が上海の店舗で出している「猪肉飯(チューローファン)」です。中国では、豚肉は猪肉と書きますが、この商品は豚肉の角煮の丼といった感じのもので、日本で販売されている「豚丼」とはまったく異なります。
中国では牛肉よりも豚肉や鶏肉を好む人が多いために、牛丼のほかに中国の人々の好みに合わせた多彩なメニューが用意されています。近年は多くの日本企業が海外に進出していますが、外食企業の場合は、現地の消費者特性に合わせなければならない部分が多く生じます。何を「日本と同じ」とし、何を「現地事情に合わせて変えるのか」が、経営戦略上の重要な課題となっています。これが海外進出の成否を左右しているといって過言ではありません。
2007年3月現在、吉野家は米国に83店、中国大陸(北京、大連、天津、上海、香港など)に126店、台湾に43店、シンガポールに15店、マレーシア・フィリピン・オーストラリアに計10店出店しており、海外店舗は合計で278店に達しています。
海外でも、吉野家のコンセプト(企業理念)や衛生管理の質あるいはオレンジ色の看板や牛丼の味は変わりませんが、一方で海外の店舗には日本と異なる点もあります。
たとえば、海外の店舗にはカウンター席がありません。マクドナルドの店と同様に、お客さんは注文カウンターでお金を払って商品を受け取り、トレイにのせてテーブル席に運んで食べます。日本では、一人で店に入ってカウンター席に座り手早く食べられる手軽さが人気を呼びましたが、そのような食事のスタイルは海外では受け入れられなかったからです。
メニューも、牛丼のほかに海外店にはチキン系の丼がありますし、中国・台湾ではポーク(豚)丼が、シンガポールではサーモン丼が、米国では天丼や野菜丼が食べられます。
みなさんも、海外で日本の外食企業を見かけたら是非一度入店してみて、日本との違いを楽しんだり、なぜ変えたのかを考えたりしてみてください。その市場の消費者特性やその企業の苦労の一端が見えてくると思います。
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