龍谷大学
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龍谷大学経営学研究科ビジネス(MBA)コース集会 生産システムサロン

第10回(1999年11月6日)

◆第1部:フリー・トーキング=午後2:30-5:35

・海外報告:由良 憲二 電気通信大学助教授(ゲスト)は、8月にアイルランドで開催された「ICRP(国際生産研究会議)」に関し、切削・研削加工という技術的問題からサプライチェーン・マネジメントのような経営問題を含む発表内容を解説した。

長谷井 雅子氏(5期生:中村クリニック)は「タイ近況」について、仏教徒が多く日常生活では宗教色の強いこと、人々は比較的独立心が強く、女性の社会進出が盛んであることを紹介した。

・第10回記念特別講演:片岡 信之 本学名誉教授・桃山学院大学教授
「21世紀の初頭の企業と経営学の方向性を探る」

21世紀を目前にして、企業と経営学は大きな転換期を迎えようとしている。この動きは国際的な政治・経済・社会の枠組みの構造的変化や先進国を中心とした成熟社会の到来と関連している。

すなわち、冷戦終結後の東西対立枠組みの解消と世界単一市場経済化・大競争化と他方でブロック経済化、新たな利害対立要因の浮上(資本主義対資本主義・民族主義・地域主義)などがその背景にある。また、先進国を中心とした成

熟社会の到来は、様々な新しい諸問題を提起している。

こうした変化を根底において推し進めている要因は、大企業体制の確立、そこを中心に展開されてきた情報化・国際化の波である。コンピュータの情報ネットワークは生産過程、流通過程、組織、社会全体(国内、国際)に広がり、それらの構造を変えている。

大量生産・大量販売型経営からフレキシブル多品種少量生産・高度注文生産型経営へ、そして階層的官僚制型経営組織からフラットでフレキシブルなネットワーク型経営組織への転換が図られてきている。

また国際化時代の企業経営は、高い国境の壁時代の経営から低い時代の経営へと進んできている。

政治面では、情報化と国際化の波によって、例えばアウタルキー的な一国社会主義型国家から情報・国境両面でオープンな国家に変わらざるを得なくなってきた。

このような情報化と国際化、企業の多国籍化・国際的大競争化時代には、企業活動は政府のコントロール下に収まらなくなる。日本の政治・経済・企業も、戦後の社会の成功を支えてきた政・官・財の三位一体体制が国内視点中心的であったため、情報・国際両面でオープンかつ競争力のある社会へ移行する上で、却ってこれらが足枷となってしまった。

そこで今、規制緩和と競争原理導入で必死に対応しようとしており、その結果として企業活動の環境には、かつてない大変化が生じてきている。

他方、大企業体制化の進行は、企業が社会的責任を益々負わなければならなくなるということでもある。成熟社会の沢山の課題を小さな政府の下でやるためにも、企業の負うべき社会的責任は大きい。

環境問題への対応、労働の人間化、社会貢献等においても、企業エゴ優先経営から企業の市民性・社会性重視経営への転換が図られねばならない。企業倫理の確立、コーポレート・ガバナンス改革の必要が強調される由縁でもある。

このような状況を前提とすれば、経営学においても、情報化社会時代の現代株式会社[大企業+コンピュータ・ベースト・コーポレーション+グローバル・ウエッブ+企業の社会性(人間性、地球環境、企業市民)]をトータルに理論化した新たな枠組みをもった経営学の構築努力が望まれる。

・第10回記念講話:第10回の節目を記念し、各期生とゲストを代表した7人のショート・スピーチが行われた。

先ず1期生の中田和夫氏(エスシーエイエヌ)は、中小企業診断士としてのキャリアをより活かすためこの龍谷大学の社会人コースの大学院生としての勉強を始められた動機を話し、最近は独立してビジネスを開始した経緯を述べ、本コースでの勉強を活かしての活躍が実感できたとされた。

2期生の日比野武蔵氏(龍谷大学)は、品質管理の実務に従事していたことから品質管理と経営の関係に興味を持ち、68歳でこのコースに入学されたことに始まり、現在は非常勤講師として龍谷大学で講義をしておられる様子を軽妙な口調で楽しく話された。

3期生の吉島雅子氏(よし島ブティック)は、達筆の書”夢”を披露され、祈れば夢は必ず実現しますと、参加者を励まされた。ブティックの経営者の力強い言葉に勇気付けられた人も多かったと思われる。

4期生の尾澤律子氏は、勤務先の地域計画建築研究所での地域開発の仕事の中で、コースで学んだ”モノ造りへの哲学”をいかに活かされたかを整然と話した。

現役学生である5期生の八木紀明氏は、勤務先の北居設計事務所が同氏が中心となってISO14000の取得した経緯とその後の苦労について具体的に紹介した。

今年度入学の6期生篠原和彦氏(帝人)は大手繊維メーカの管理職の立場から、現在の会社内での多品種化の流れと情報化への対応について解説した。

最後に、ゲストの井上 肇京都工芸繊維大学講師は、30年以上前になる人見教授との出会いから、近年人見著書『生産システム工学』で講義をしており、本書の丁寧な改訂など、いくつかのトピックスをとりあげて、ユーモア溢れる口調で講話を締め括られた。

◆第2部:懇談・立食パーティ=午後5:30-6:45

・感想:1999年度のサロンは、実にバラエティに富む内容の話となり、特に第9回の税金問題特集は好評を得、“第10回”記念は、片岡先生の特別講演、コース修了者・在籍者・ゲストによる記念講話で盛り上がった。ただ参加者増加と時間不足で、本来の趣旨である全員発言がおろそかになっている感は否めない。2回とも、恒例通り座学のあとの立食パーティで、三々五々懇談―異業種交流の実が挙がったといえる。

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