龍谷大学
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龍谷大学経営学研究科ビジネス(MBA)コース集会 生産システムサロン

第11回(2000年6月3日)

◆第1部:フリー・トーキング

・特別報告:敦賀 誠一氏(桐畑商事/第1期修了生)
「ダライ・ラマ法王14世東京講演」を聞いて

4月14日と15日、東京ベイNKホールでダライ・ラマ法王の仏教の「智慧」と「慈悲」についての講演会が開かれた。ダライ・ラマ法王は智慧と慈悲を仏教の最も大切な教えと考えており、次のように語った。

智慧とは全ての現象の性質を見ることであり、慈悲とは他を思いやる心を示している。すべての人はこれらの教えを基にして内面的平和を創り出す可能性をもっている。このとき大切なことは『汝自身の支配者になれ』ということである。

行いのすべては個人に依拠しており、人は自分自身で正しい道を見つけなければならない。このためには忍耐力を持つことが非常に重要で、他方決断力や自信も大切である。そして何か考えが思い浮かんでも行動を急いではいけない。考えて考え抜くことが肝要である。

・特別講演(その1):原 光世先生(本学教授)
「企業会計のグローバルスタンダード」

会計報告書の基本的な役割は、企業の利害関係者に対し、意思決定に必要な有用な情報を提供することにある。世界各国はそれぞれ固有の歴史、価値体系、政治、経済組織を有するため、財務会計の発展形態も国によって異なり、各国に実質と形式の違う多様な会計報告書が作られてきた。しかし近年の企業活動のグローバル化によって、多国籍企業が増加し、進出国の会計ルールに従った会計報告書を作成することが必要になっているが、各国で異なる会計報告を作ることは容易ではない。またグローバル化した証券市場を見ても、会計報告が国によって異なることは投資家の混乱を招くことになり兼ねない。そこで多国間にわたる投資家、債権者、消費者、従業員などの利害関係者に、世界的規模での統一的なルールによる財務報告を行う必要性が高まっている。

世界的に見て主要な会計モデルとしては、英米型と呼ばれる高度に発達した証券市場に対応した投資家指向の会計モデルと大陸型と呼ばれる資金供給者としての銀行、政府の役割のウエイトが高い債権者保護思考が強いモデルの2つがある。この両モデルを中心に調整を行い、国際会計基準を設定するために、国際会計基準委員会がロンドンに設置されている。この会は
(1)会計基準を公共の利益のために公表し、かつ世界的に承認され、遵守されることを促進する
(2)規則、会計基準および手続きの改善と国際的調和に向けて活動する
ことを目的に掲げて活動を行なっている。

今までの日本の企業会計は、粉飾決算があったりして海外からかなり疑いの目をもって見られている。特に英米から見た場合、投資家のための情報としての質が低い。今後国際会計基準が英米型になってゆく公算が高いため、大きく変革が行われようとしている。しかし英米型の会計基準というのはあまりにも投資家のための情報に特化しているため、今後環境会計など従業員や消費者を考慮した基準への見直しが必要になると考えられる。

・特別講演(その2):中條 鐘一先生(中條設計技術研究所所長・技術士)
「新たな産業革命を目指してISOは何を考えているか -世界は大きく変る、日本も大きく変る-」

国際標準化機構:ISO(International Organization for Standardization)は、物資及びサービスの国際交換を容易にし、 知的、科学的、技術的および経済的活動分野の協力を助長するために、世界的な標準化及びその関連活動の発展・開発を図ることを目的に、 1947年に発足した。中央事務局はスイスのジュネーブにあり、現在109国が参加しているが、 近年の企業活動のグローバル化により、ISOの決定は以前にも増して大きな力を持ってきている。特にISO9000ファミリーは”品質マネジメントシステム”を規定しており、日本企業にとっては、品質管理に実績を示してきたものの、脅威となっている。日本製品の品質の高さには以前から定評があったにも関わらず、ISO9000ファミリー設定には日本の意向は全く反映されておらず、 日本は後追いをしている。このため高いロイヤリティーを払うことが多くなり、結果的に製品の市場競争力が低くなってしまっている。この原因の一つは、日本の学識経験者が標準は外から来ると考えていることにある。

ISOは、現在の品質マネジメントシステムと環境マネジメントシステムに加え、 今後は労働安全衛生マネジメントシステム、グループ企業の財務状態、情報システム製品の調達基準へと対象を広げてくる。このようなヨーロッパからの標準化戦略に対し、アメリカはデファクトスタンダードで主導権を握ることにより対抗している。日本はこれらに対してまったく手を打っておらず、このままでは国際的な製品競争力が低下していくのは目に見えている。

日本の製造業が今後発展していくためには、国際標準化への積極的な対応が避けて通れない。とくに設計・製造時間の短縮とコスト削減および情報の一元化への取り組みが重要であり、課題はSTEP/EDIの動向にある。つまり企業間でのデータの交換の問題をいかに無くすかである。このために各企業においては、社内標準の根本的な見直しが必要になる。また政府は技術開発戦略を立案し、研究開発を重点化することが不可欠である。これにより、欧米だけでなく環太平洋諸国を含めた日本包囲網を突破することができるであろう。

◆第2部:懇談・立食パーティ

◆取材:フリージャーナリスト上保文則氏が今回のサロン活動を取材、「イグザミナ」8月号71頁に下に掲げるコラムを載せられました。このご尽力に対し、深甚の謝意を表します。

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