龍谷大学経営学研究科ビジネス(MBA)コース集会 生産システムサロン
第12回(2000年11月11日)
◆第1部:フリー・トーキング
第12回生産システムサロンは、新しい世紀に入るのを目前にして、“21世紀への抱負”を統一テーマに、6人の方々が話題提供をされました。その要約は以下の通りです。
- ・Anshuman KHARE副教授(インド/カナダ・アサバスカ大学:1996年度大学院文部省留学生)
- 自動車と環境問題の関係について、広範囲な視点から問題提起をされた。自動車は便利であり、産業界にとっても重要な製品であるが、他方その排気ガスや資源の大量消費は環境に悪影響を及ぼす。この相反する性質をどのようにコントロールしていけばよいのだろうか。それには先ず、環境に優しい製品の経済的コストを試算することが必要であり、また分解が容易でリサイクル容易な製品を設計しなければならない。流通においてもその販売ルートは確立されているのに、回収するシステムはほとんど出来上がっていない。それは一部の小さな会社が行なっているのが現状であり、大企業の取り組みが望まれる。そして最終的には、我々消費者が、自動車の使用をどのように考えるかが大きな問題であろう。
- ・安藤 幸広氏(安藤プロパン/地球環境財団:第1期修了者)
- チェコとドイツの製造業を見学された印象を報告された。チェコはヨーロッパの中心に位置して地理的環境に恵まれている上、人件費が低く従業員が勤勉で、論理的思考に長けているため日系企業にとって進出し易いと思われるが、現段階ではまだ社会主義体制だったときの悪い面もあり、硬直した関税や労働者の権利が優先され過ぎた習慣など問題が残っている。ドイツは輸出が伸びて経済は順調であるが、新しい工業の技術者が足りないのに失業率が高く、未だに東西ドイツの経済格差がなくならないなどの国内問題を抱えている。
- ・宋 相載助教授(韓国/広島工業大学:ゲスト)
- 韓国から17年前に来日され、日本で学んだことを振り返りながら、これからの抱負を語られた。今後製造業では技術の複雑化・高度化・多様化が進み、不確実性に対処する‘知的なモノづくり’が必要となる。これを実現するためには、製造技術と情報技術を融合して高度な意思決定を行えるよう、ソフト・コンピューティング技術を取り入れる必要がある。これにより、リードタイムを短縮するとともに高精度の予測を行い、自立性に富んだモノづくりが可能となろう。
- ・諸角 今日子氏(アドパック:第7期生)
- ビジネスコースの最年少の学生として、なぜビジネスコースで勉強を始めたのかを話された。以前は会社が終わったあと大学院に通う女性は少なかったが、最近では一般女性誌で社会人向け大学院の特集が組まれるほどになっている。それは、知的好奇心を満足させるとともに、社会環境が変わって実力と資格が誰にでも求められるようになってきたからであろう。
- ・太田 雅晴教授(大阪市立大学商学部:ゲスト)
- 本年4月から10月まで滞在されたアメリカのケース・ウエスタン・リザーヴ大学の ウエザーヘッド・ビジネススクールについて報告された。同コースははアメリカのビジネススクールの中で30番目程度にランクされる大学で、他のビジネススクール同様、授業の多くの時間ははディスカッションに使われ、受身でおられる日本の大学に比べて厳しく、積極的に勉強しない者は落ちこぼれてゆく。日本からの留学生も多く、男性は主に企業からの派遣、女性は個人留学が主である。教員も日本はぬるま湯的で、これからは実力ある研究者であることが不可欠である。
- ・日比野 武蔵講師 (龍谷大学経営学部:第2期修了者)
- 21世紀を目の前にして、‘昭和’という時代をご自身の思い出とともに振り返り、総括された。特に第二次世界大戦中の体験を詳しく語られ、戦争の悲惨さを伝えられるとともに、戦争の責任・原因・可能性について客観的に分析された。そして今後戦争を無くすための考え方と心の持ち方を述べられた。
◆第2部:懇談・立食パーティ
◆感想:本年度はミレニアム(千年紀)の始まり、そして20世紀最後の年-日本の景気が未だ一つはっきりしない中、来年の新世紀への期待を込めて、本サロンは6月の第11回には、ハイライトは「国際基準特集」として、中條鐘一先生の技術問題、原 光世先生の会計問題に 関する特別講演を承り、また敦賀誠一氏のダライ・ラマ講演の紹介があり、11月の第12回 では、いよいよ21世紀への突入間際-”21世紀への抱負”と題しコース修了者・在学者・ ゲストによる講話で、実にバラエティに富む内容となりました。
来年度は新しい21世紀に入り、2001年6月2日第13回のハイライトは、由井 浩本学教授をコーデイネータとする「品質問題特集」、11月17日の第14回には「国家資格保持者特集」を 企画しており、多数の方々の参加と活発な意見交換・異業種交流を念願しております。各位の格別のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げる次第です。
なお、本年度開催の2回のサロン研究活動に対し、龍谷大学および同経営学会より研究費が支給されましたことに対し、深く感謝申し上げます。今年度の2回とも、恒例通り座学のあとの立食バーティで、三々五々懇談-異業種交流の 実が挙がりました。この席上、第1期生有志、三菱事務機械北浦伸雄氏および日比野武蔵先生より 飲み物の寄贈を受けたことに謝意を表します。
→一覧へ戻る
▲このページのトップへ戻る