龍谷大学
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龍谷大学経営学研究科ビジネス(MBA)コース集会 生産システムサロン

第18回(2003年11月15日)

以下の通り6名の方々による「起業」に関する報告があり、極めて興味深い内容でした。殊に最初の報告者のカレ博士は、カナダからご来訪、深く感謝申し上げます。

起業特集

(1)「"Ecopreneurs": Entrepreneurs who are conscious about the environment」
   :カナダ・アサバスカ(Athabasca)大学副教授 アンシュマン・カレ(Anshuman Khare)博士(3期参加者)

シュンペーターは、1934年に資本主義における革新の本質的な重要性について明らかにし、保守的に仕事が行われるだけでは資本主義経済は維持されず、継続的な革新が資本主義を発展させること、そしてこれらの革新を行う企業者とその精神について論じた。起業家はフランス語を語源として"アントレプレナ"と呼ばれ、"アントレプレナシップ"(企業家精神)は近年の経済開発および貿易の活発化に貢献してきたが、自然保護にはあまり役立たなかった。このことはアントレプレナシップにおける環境への責任の認識を意味しており、これを"エコプレナシップ"と呼ぶ。環境問題は今後ビジネスとして成り立つであろうし、アントレプレナシップは社会に役立つことを行っていこうとする精神を持っているため、併せて"エコプレナ"という呼び方ができる。イサクは1999年に、持続可能な経済のために何かを行おうとしている者はすべてエコプレナであるといっている。

環境問題の解決は簡単ではない、エコプレナは正直に実直に数々の深刻な問題に立ち向かっていくしかない。そのためには、公共機関、そして大学もグリーンビジネスについて研究を進めなくてはいけない。

(2)「ソフト業における"起業"体験」:サイコム・コーポレーション 伊藤俊太郎氏(ゲスト)

住友金属退職後1999年よりソフト関係ベンチャー企業のインキュベータを仕事としているが、日本ベンチャーの起業の壁として、資金、人材、販売、商品開発、ブランド力、経営管理、情報、インキュベーションの諸問題があることがわかった。「勝てる商品・サービスの選定」、「たとえ小さな市場でもシェアが大きい戦場を選ぶ」、「良いパートナーを選択し、勝ち馬に乗る」の3つを選択することを信条として育成支援を行っている。

ITビジネスコンサルタントとして感じていることは、「新しい人脈形成」、「東京を中心に動いて情報を集める」、「行動第一」、「PCを使いこなして経理処理や資料作りを厭わない」を実行すれば、60歳を超えても、独力で結構やれるということである。

(3)「集客力を考える」:メンタルタフネス研究所 敦賀誠一氏(1期修了者)

2年前にメンタルタフネス研究所をスタートさせ、ホームページを立ち上げた。当初訪問者が少なかったので、プッシュ型の情報提供に変えるためメルマガを発行した。一般にこの読者は1万人いないとビジネスとして成り立たないといわれているが、当研究所の読者は最盛期で7千人程度であった。メルマガを送付すると、30%程度がホームページを見てくれることがわかったが、結果的にインタネットが大きなビジネスに繋がることはなかった。

現在主な事業として行っている管理職研修のテキスト作りと腫瘍マーカの貿易業務は、知合いを通じてのものである。

(4)「起業4年」:エスシーエイエヌ(SCAN) 中田和男氏(1期修了者)

平成11年よりアンリツ(株)より事業譲渡を受け、ビル管理システム事業と自動散水器事業を起こした。起業の準備として、中小企業診断士を取得し、龍谷大学ビジネスコースで経営、会計、税理を学んだ。この4年間事業の規模はほぼ横ばいであるが、対象業務は起業時に加えて、磁気活水器、床暖房制御器、コンサルティングを行っている。

今後はガス温水床暖房に対抗できる新たな温水床暖房と農業・園芸用潅水コントローラの開発に事業を拡大したい。このためには、取引先だけでなく、学生時代や診断士仲間など友人との連携、また海外を含めた新規の協力者を見つけていくことが大切であると考えている。

(5)「SOHOベンチャーの起業に挑戦」:新分野マーケティング戦略研究所 真島正臣氏(4期修了者)

経営に関するプランニングから企画提案までの戦略支援を行う研究所を設立した。設立準備に当たり、文学部出身であるためビジネスについての知識が足りないと考え、企業に在職しながら商学部と経営学大学院に通って勉強した。設立動機は定年後の働く場を自分で開拓したかったからである。

今までに伝統工芸品のブランド戦略提案、国際会議会社の営業開発、外国証券会社のパンフレット企画と文案、専門学校講師などの仕事を行った。現在はマーケティング戦略と地域産業のIT活用B2B戦略、新分野市場の先取りなどに取り組んでいる。

今後はさらに得意分野を絞り込み、下請け状態から提案型ビジネスへ転換し、コーディネータ機能を発揮したネットワークの中核SOHOを目指したい。

(6)「起業を巡る様々な視点」:大阪市立大学商学部教授 太田雅晴博士(ゲスト)

モノの豊かさを求める時代から心の豊かさを求める時代に生活の価値観が変化している。これに情報ネットワークの発展が重なり、製造業には、製品企画・設計戦略、サプライ・チェーン戦略、デマンドチェーン戦略をオペレーション統合することが求められている。

産業創発の二つの経路として「新しい知識を創造しての起業」と「すでにある知識を関連させた上で従来と全く異なった使い方をすることによる起業」が指摘されている。システム論から考えると、ネットワークの高度化により、系列→自己組織化→オートポイエシスへと組織や人の繋がりが変化していくと考えられる。そうすると、ネットワーク内での閥の形成促進、個々の組織や人が他に情報を開示する仕組み、環境に応じて順次閥を発生させ形成させること、閥におけるリーダの存在、閥と閥を結びつけるより大きな効果を生みだす中間媒体の存在などが今後問題になろう。具体的には、その設置柔軟性、非営利性、公平性などを考慮し、心の豊かな社会を実現するにはNPOの重要性が高まるであろう。

また、この龍谷大学経営学研究科に代表されるように、ビジネススクールの役割は、異業種人材ネットワークの形成、企業エリアの発見、情報交換、技能・ノウハウ・知識の明示という諸面から益々大きくなろう。

(追記)これまでの18回のサロン企画・実施の世話に携わった人見勝人は、2004年3月末日本学任期満了で退任のため、これをもって退きます。サロン実施に当たり、教務課の石田義憲氏(前任)と糸川幸雄氏、そしてビジネスコースの敦賀誠一氏・真島正臣氏・篠原和彦氏・水谷真久氏らが尽力されました。また要旨作成は、石倉弘樹大阪学院大学助教授が当たられました。これまでに賜わりました諸氏の多大のご支援に深く感謝し、厚く御礼申し上げ、代表の原光世先生ご指導による今後のサロンの一層の発展・繁栄を祈念致します。

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