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龍谷大学経営学研究科ビジネス(MBA)コース集会 生産システムサロン

第20回(2004年11月13日)

■特集Ⅰ:第20回記念講話
人見勝人先生「生産システム:過去、現在、そしてこれから」

 記念講話では、生産システムの過去、現在、そしてこれからについて、次のような体系にそくして講演された。

 1.「生産」の言葉遣い
 2.「生産システム」の範疇
 3.「生産システム工学」の体系
 4.「生産システム」:過去から現在へ
 5.現代生産の動向
 6.日本のモノ造りは大丈夫か
 7.「生産システム」:これから

[記念講話の要旨]

「生産」は、この世にない財貨(製品・サービス)を創出することで、英語では、ProductionやManufacturingが用いられるが、 本来はProductionの下位概念であるManufacturingが広い意味で使われている。現代では、生産システム=Manufacturing Systemの 用語が定着し、つぎの3つの観点が議論されている。 (1)構造:プラント・レイアウト (2)変換:ロジスティック/サプライチェーン・システム<物の流れ> (3)手続:マネジメント・システム<情報の流れ・原価の流れ>

「生産システム工学」:Manufacturing Systems Engineeringとは、つぎの3つの機能を融合化・体系化した生産の学術をいう。 (1)プロセス・システム:生産技術的側面<物の流れ> (2)マネジメント・システム:生産経営的側面<情報の流れ> (3)バリュー・システム:生産経済的側面<価値/原価の流れ>

また、歴史的所産としての生産システムの発展過程をみると、「生産手段」の発展(道具・工具の利用の段階から無人化の段階まで 4段階に区分)によって物の流れの効率化が促され、生産管理の発展(成行き管理の段階からシステム管理の段階まで4段階に区分)に よって情報の流れの効率化が促進されてきた、といえる。現代生産の動向として、つぎの4つの事柄を挙げることができる。 (1)生産のソフト化 (2)生産の情報化 (3)生産のサービス性:顧客満足化(CS) (4)生産のグローバル化

つぎに、近年における日本のモノ造り=製造業の衰退状況は、つぎのAからHに示す具体的事実によって示すことができる。
A.製造労働者数 製造業に従事する労働人口は、92年の1609万人をピークに減少に転じ、02年には1149万人と3割近くも減少した。
B.製造業事業所数 83年までは増加の一途を辿りこの年78万とピークを迎えたが、01年には56万と3割近く少なくなった。
C.海外依存度 米、独に比べて低いものの、製造業の海外生産比率は20%近くに達している。特に、基幹産業である自動車の 海外生産比率は50%、輸出を含めた海外依存度は7割に及ぶ。
D.製造生産性 04年4月に内閣府経済社会総合研究所から公表された資料に基づき、各産業部門の労働生産性(就業者1人・1時間当り創出付加価値額)比較すると、製造業は4516円であり、これは4526円の全平均よりも低い。
E.製造付加価値率 製造業の生産性が高いとは言い難い原因の1つは、産出価値に対して購入価値が高く、結果として付加価値額が低くなるためである。製造業の付加価値率は、全産業中で最低である。
F.中小製造業の損益効率 日本の中小製造業(従業員300人ないし資本金3億円未満)は、91.1%を占めているが、従業員1000人以上の大企業に比べ、生産性は47%、賃金は56%と低い。
G.巨大製造業の効率 巨大製造業をROE、売上高利益率等を指標に国際比較してみると、日本の巨大製造業は見劣りする。
H.製造業の国家的役割 02年における日本の労働人口、産出額、GDPに占める製造業の比率をみると、労働人口とGDPは2割を切っており、産出額も3割弱である。

このように、製造業主導のモノ造りだけで国が成り立つとは、残念ながら到底考えられない。 これからの生産は、自然との調和の中で節度ある適正な利益の取得と永続可能な安定成長の途を模索し、社会厚生・公共福祉に寄与する 最適の生産-「社会的適正生産」socially appropriate(or responsible)manufacturing ないしは「社会的有用生産」socially useful production -が肝要である。これが究極の社会的マニュファクチャリング・エクセレンスで、それはヒューマニズムに基づく生産倫理 (manufacturing ethics)で支えられよう。そのあるべき姿としては、つぎの原則が挙げられる。 ・最底(低)限の性能をもつ各メーカの独創性に富む完璧な製品を開発し、物真似生産はしないこと。
・最少量の資源と部品であること。
・最長寿命を保証した部品・製品であるべきこと。
・資源と部品の再利用・リサイクルが考慮され、極少廃棄であること。
・最底利益が企画されていること。

これからは、生産[システム]を単なる技術とみるばかりでなく、社会的な立場から展望し、人類に欠かせぬ大事な活動ながら「生産は 根源的に地球破壊である!」ことを念頭に置いて、企業の立場からは“社会的適正生産システム”の企画・運用、個々人は“知足生活”、 そして国家は脱GDP“厚生社会”建設に真摯に取り組むことにより、空想的社会主義者オーエン、エンゲルス(F.Engels)、クラーク (J.B.Clark)、ヴェブレン(T.B.Veblen)、田中正造、柴田敬など諸先達の警告への回答としなければならない。

特集II:パネル・ディスカッション「大学院における社会人ビジネス教育の展望」

・基調報告 経営学研究科長 西川清之教授 「社会人ビジネス・コースの現状と将来構想」
・パネル報告者
 森田弘行 氏(2期修了者:大阪国税局)
 真島正臣 氏(4期修了者:SOHO新分野マーケティング戦略研究所)
 桂 郁夫 氏(現役生:ケミカ開発センター)
 石倉弘樹 氏(ゲスト:大阪学院大学企業情報学部助教授)
・司  会 政岡光宏教授(元経営学研究科長)

西川清之研究科長から、社会人ビジネス・コースの現状と将来構想について、
1)ビジネス系社会人大学院をめぐる最近の動向
2)本学ビジネス・コースの現状と問題点
3)ビジネス・コースの将来構想等について基調報告がなされた。

パネラーには、主につぎのようなテーマに関して、10~15分程度の報告をお願いし、その後フロアからの発言も交えて30分の ディスカッションを行った。
1)大学院での社会人ビジネス教育に何を期待するか
2)現実のキャリアアップにどの程度貢献しているか
3)どのような教育方法がビジネスパーソンには効果的か
4)今後の大学院ビジネス教育、特に本学ビジネス・コースの教育に望むことは何か

報告とディスカッションの中での提示されたいくつかの意見や見解のポイントはつぎのとおりである。
・相手の論理を理解し、かつ相手を説得する能力を向上させるためディベート力の養成は重要
・仕事に必要な専門知識の修得と能力の向上
・経営学の基礎理論の修得など理論を重視した講義も重要である
・実践経験を体系化するための理論的な能力を高める(理論と実践の相関を修得)
・社会人院生によるネットワーク形成は重要かつ有益である
・カリキュラムにケーススタディーを積極的に導入する

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