昨今の世の中は、個々の物事だけで良し悪しを決め過ぎている。例えば競争原理が社会を発展させる原理とされているが、敗北者を救う制度は用意されていない。今人類が直面する最も深刻な課題-環境問題でも、国際協調が論じられているが、各国のエゴをどう乗り越えるかについての議論は全く不十分である。研究者は、全体に目を配って個々の物事の良否を考えてゆくことが必要となってきている。
生産においても同様で、新製品開発を行なうとき、地球環境に配慮したリサイクルがとりあげられようとしているが、もし半永久的に使える製品生産だけでは、企業倒産が続出することまで考えておかねばならぬ。
経営学の分野では、最近の通信技術の進歩により、情報システムの再構築が盛んに議論されているが、その多くが新しい技術にどう対応するかに費やされていて、組織内の人間が上手に対応できる導入に向けられていない。
全体を考えるということは、生態系のバランスにまで留意し、共生と競争社会の両立をはかることであって、答えは簡単に出るものではない。教育の中で、時間をかけて解決していく以外に方法はなかろう。