昨今の政官財トップの汚職事件やアメリカ型社会倫理からの要求に右往左往している日本の社会を見ると、固有の倫理の再構築が急がれていることがわかる。そしてこの日本独自の倫理を研究することは、経営学分野にとっても重要である。
日本には、古く縄文時代より自然秩序の優位性への信仰があり、弥生時代を経て、その後儒教や仏教の教えと融合しながら固有の価値観が形成されてきており、これが社会倫理となっていると見ることができる。キリスト教による個人主義と合理性をベースにした西洋の価値観と異なり、日本の価値観は相互依存を前提として成り立っている。このような価値観は、古くからの京都の老舗の社訓における、家名の継承、祖先崇拝、正直、精進、忍耐、知足などに見ることができる。これは現代企業においても、協調重視、集団主義、包括協業主義として受け継がれているが、戦後の経済成長やアメリカ的な価値観の導入により急速に衰退しており、今日の社会混乱の原因にもなっている。
日本の国柄の再吟味と覚醒の必要性が高まっているが、このためには各人の欲望の自己抑制と自然との共生、そして学校での日本国憲法による倫理教育が必要であろう。