会社で品質管理の仕事をしていた若い頃、一部の工程を最適化したために全体としての品質や効率が悪くなる例を多く見た。この全体を見ずに部分部分を最適化することにより全体が上手くゆくと考えるデカルト以来の思想は、今や私たちの生活を脅かし始めている。自然界は、植物を草食動物が食べ、これを肉食動物が食べ、これが微生物により分解されて植物の栄養となる循環により支えられてきたが、昨今の人間は、属する組織の目的達成だけを考えて行動をするようになった結果、オゾン層の破壊や内分泌撹乱物質の発生の問題が発生した。
内分泌撹乱物質は人体に取り込まれると、1兆分の1グラム単位の極く僅かの量で、ホルモンに似た機能を示し、生殖機能阻害、異常行動、免疫機能低下、甲状腺異常、脳・神経系発育異常などの恐れが高いと考えられている。
内分泌撹乱物質―いわゆる“環境ホルモン”は、カップラーメンの容器やゴミ焼却場など身近なところで発生し、その種類は現在わかっているだけでも70種類以上ある。その規制値は、日本ではアメリカの500~1000倍と、他の先進諸国と比べてあまりにもゆるい。
このように、内分泌撹乱物質は人類の生存に関わる深刻で重大な問題であるが、その対策は極めて貧弱である。各人が全体の立場から知恵を出し、解決しなければならない。